iPIC事業関連の論文が掲載されました。「免疫抑制糖尿病ミニブタモデルの作製とヒトiPS細胞由来膵島様細胞の異種移植」

糖尿病の根治的な治療法として、ES細胞やiPS細胞などのヒト多能性幹細胞から作製した膵島様細胞の移植が期待されており、オリヅルセラピューティクス株式会社(以下「当社」)ではヒトiPS細胞由来膵島細胞(iPIC)の製品開発を進めています。細胞移植による生着効果を検証する際に繁用される小型のげっ歯類では、ヒトでの移植時に想定される大きな移植物や多数の細胞を許容することができないため、大動物試験が有用となります。しかしながら、大動物でのヒト細胞移植の際に、糖尿病モデルの安定した作製・病態維持と並行して、異種細胞に対して生じる強い免疫拒絶反応を抑制しながら、生着評価を行うことは非常に難しい課題です。

山﨑緑 主任研究員(武田薬品工業株式会社T-CiRAディスカバリー、現 同社グローバルアドバンストプラットフォーム)、上野光 非臨床グループマネージャー(武田薬品工業株式会社T-CiRAディスカバリー、現 オリヅルセラピューティクス株式会社)、および当社サイエンティフィックアドバイザーである豊田太郎 講師(京都大学iPS細胞研究所(CiRA)未来生命科学開拓部門、元タケダ-CiRA共同研究プログラム(T-CiRA)PI)らの研究グループは、免疫抑制糖尿病ミニブタモデルを作製し、異種細胞であるiPICの生着評価を行いました。ミニブタを用いて、外科的な胸腺と脾臓の摘出、免疫抑制剤反復投与、および膵β細胞を破壊する薬剤を組み合わせることで、免疫抑制1型糖尿病の大動物モデルを作製することに成功しました。本モデルにiPICを移植した際には、ミニブタの血中にヒトCペプチドが検出され、また組織学的解析からもiPIC由来のヒト細胞が生着していることが確認できました。ヒト細胞を用いた糖尿病治療製品の開発に際し、臨床を想定したサイズの移植物や移植方法の検討において、本モデルでの生着評価が有用であると期待されます。

この研究成果は、2024年10月14日(米国時間)に米国科学誌「Cell Transplantation」にオンライン公開されました。
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詳細は京都大学iPS細胞研究所 CiRAのウェブサイト(外部サイトに遷移します)をご覧ください。

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<iPS細胞由来膵島細胞 (iPIC) について>
iPICは、CiRAの豊田太郎講師(参考:豊田グループのウェブサイト)が見出した膵分化誘導法を土台に、T-CiRAプログラムでの5年間の研究を経て開発された、細胞治療への応用に適したヒトiPS細胞由来膵島細胞です。iPICは、成熟した膵β細胞様の細胞を生体の膵島と同程度に含む高純度の膵内分泌細胞凝集塊です。移植後、生体内でグルカゴン陽性細胞を含んだ膵島構造を形成し、血糖値の変化に応答した生理的なインスリン分泌能を発揮することで、移植後の糖尿病患者さんの病態コントロールに役立つと期待できます。

<オリヅルセラピューティクス株式会社(OZTx)について>
2021年4月に京都大学イノベーションキャピタル株式会社によって設立されたOZTxは、「科学の無限の力で世界により良い健康への希望をもたらす」というビジョンを掲げています。患者さんに細胞医療を届けるために、以下の事業内容を通じて、再生医療等製品および革新的なiPS細胞関連技術の社会実装を推進します。
1. 細胞移植による再生医療等製品の開発
2. iPS細胞関連技術を利活用した、創薬研究支援および再生医療研究基盤整備
詳細については、https://www.orizuru-therapeutics.com/をご覧ください。

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オリヅルセラピューティクス株式会社 広報担当
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