iPIC事業関連の論文が掲載されました。「iPS細胞由来細胞治療における生体内分布評価の考慮点:膵島細胞を用いた事例研究」
糖尿病の根治的な治療法として、ES細胞やiPS細胞などのヒト多能性幹細胞から作製した膵島様細胞の移植が期待されており、オリヅルセラピューティクス株式会社(以下「当社」)ではヒトiPS細胞由来膵島細胞(iPICs)の製品開発を進めています。iPS細胞由来の細胞製品を実用化する上で、移植後の細胞の体内挙動や潜在的腫瘍形成リスクを適切に評価することは大変重要であり、そのための生体内分布試験は欠かせない安全性試験の一つとなります。しかしながら、現在に至るまで、生体内分布試験のための標準化されたプロトコルはなく、一貫性および信頼性のある評価方法の構築が課題となっています。
中山美有 研究員、山本俊輔 主席研究員、守屋優 主席研究員(武田薬品工業株式会社 薬物動態研究所)および当社非臨床グループマネージャーである上野光らの研究グループは、生体内分布評価プロトコルの標準化およびiPICs皮下移植後の体内分布の検証を目的として、試験を行いました。ヒト特異的なLINE1配列を標的としたドロプレットデジタルポリメラーゼ連鎖反応法(ddPCR)の最適化を通じて、単一組織の検量線のみで全身臓器に対する良好なヒト細胞定量性を担保することに成功しました。本試験系を利用し、iPICs移植後のマウス体内でのヒト細胞の検出を試みたところ、iPICsは体内の他臓器へ移行することなく1年に渡り移植部位である皮下に留まり続けることが明らかとなりました。以上の結果から、生体内分布評価法LINE1-ddPCRは、iPICsの安全な体内分布を実証するとともに、今後の他の細胞治療製品開発にも適用され得ることが期待されます。
この研究成果は、2025年7月21日(米国時間)に米国科学誌「Molecular Therapy Methods & Clinical Development」にオンライン公開されました。
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<iPS細胞由来膵島細胞 (iPIC) について>
iPICは、CiRAの豊田太郎講師(参考:豊田グループのウェブサイト)が見出した膵分化誘導法を土台に、T-CiRAプログラムでの5年間の研究を経て開発された、細胞治療への応用に適したヒトiPS細胞由来膵島細胞です。iPICは、成熟した膵β細胞様の細胞を生体の膵島と同程度に含む高純度の膵内分泌細胞凝集塊です。移植後、生体内でグルカゴン陽性細胞を含んだ膵島構造を形成し、血糖値の変化に応答した生理的なインスリン分泌能を発揮することで、移植後の糖尿病患者さんの病態コントロールに役立つと期待できます。
<オリヅルセラピューティクス株式会社(OZTx)について>
2021年4月に京都大学イノベーションキャピタル株式会社によって設立されたOZTxは、「科学の無限の力で世界により良い健康への希望をもたらす」というビジョンを掲げています。患者さんに細胞医療を届けるために、以下の事業内容を通じて、再生医療等製品および革新的なiPS細胞関連技術の社会実装を推進します。
1. 細胞移植による再生医療等製品の開発
2. iPS細胞関連技術を利活用した、創薬研究支援および再生医療研究基盤整備
詳細については、https://www.orizuru-therapeutics.com/をご覧ください。
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オリヅルセラピューティクス株式会社 広報担当
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