組織原理を支える２つの視点

■ リーダーシップとオーナーシップ
オリヅルセラピューティクスはその発足時に「スモールカンパニーの長所を最大限に発揮する組織」という目標を掲げました。すなわち「素早い意思決定」「簡潔明瞭な手順」「明確な責任の所在」を持つ組織です。また、リソースが限られることから、各社員にはマルチタスク/マルチロールを担うことを求めます。このため組織としては機能型組織の壁をなくすことが必要となり、各社員には、研究者やテクニシャンなど業務の専門家であるのみならず、自分自身で考え決定すること(=リーダーシップ)や当事者意識を持つこと(=オーナーシップ)を期待します。この二つは、すなわち「セルフマネジメント」ということであり、オリヅルセラピューティクスは「セルフマネジメントが各社員と組織に備わっている、もしくはこれから育っていくこと」を前提として組織をデザインすることとしました。これにより、各部門が上位組織階層から与えられた目標によって動き、その結果を評価されるのではなく、最前線のチームもしくは社員に行動目標の決定権が与えられ、主体的に活動し、自ら評価をする組織になることができます。その結果、管理職は各業務の専門性を追求するのではなく、誰を、もしくはどのチームを担当にするか、あるいは意思決定者にするか等を助言し、最低限の労務管理やプロセス管理等のサポートを提供する役割に留まることになります。

■ 機能別組織 vs. チーム
上述のような「最前線の現場に決定権が与えられる」には「個々の社員がその職務を遂行する能力がある」ことが前提条件です。そして、各社員の職務遂行の結果は機能別組織（専門家集団）ではなく、それにより利益を享受する事業部門もしくはチームに帰属します。結果として機能別組織としての責任よりもチーム内での貢献に主眼が置かれるため、「その業務はこの部門の業務ではない」と言った議論ではなく、「この成果を達成するには誰がどうするのが適切か」といった議論が推奨されます。一方で機能別組織としての責任が優先されにくいために、大企業のように高い業務専門性を持つ部門を持つことのできる組織と比べるとリスクが内在しています。したがって、CEOおよび経営会議はこのリスクがあることを認識し、結果として専門家集団として機能できなかった場合であっても機能別組織に説明責任を求めないこととしています。
CEOと経営会議はそのリスクを最小化するためのアクション、例えば社員の能力発揮が最大化できるような働きかけや業務にモチベートされるような組織運営を行います。また管理職は現場レベルでのリスク最小化のための議論や意思決定プロセスをサポートする役割を持ちます。